《菅野愛衣side》


さっき先輩の知り合い?の人が私を見て若干嫌な顔をしていた。

やっぱり先輩は大学でもいろんな人から好意を向けられてるんだろう。人としても、男としても。

先輩が他の女の人に興味ないのは知っていたけど、好意を持たれて嫌な気持ちになっていたのは知らなかった。


まだまだ他にも知らないことがたくさんあるんだろうなぁ。

ちょっとずつ知っていきたい。


「あ、あれ菅野さん好きそう。」


先輩の指差す方を見れば、美味しそうなフルーツタルトの写真。


「美味しそう!
私ケーキだとフルーツタルトがいちばん好きなんですよね。」


「あの店入ります?」


「でも夜ごはんが……。」


「じゃあテイクアウトできるみたいだし、持って帰りましょうか?」


「んー……。」


「何で悩んでます?」


「最近少し太ったんです。」


「ふふ、それが理由でしたか。
それなら今度にしましょう。俺が次菅野さんの家に行く時の手土産は、このタルトにしますね。」


「わかりました。楽しみにしてます。」


いつも私の好きそうなもの見つけては、食べましょうかって提案してくれるとことか、私のしょうもない悩み事を聞いてちょっと手助けしてくれるあたり、ほんと優しいなと思う。


「他に好きな食べ物はありますか?」


「甘いものは和菓子も洋菓子もなんでも好きで、ご飯系だとオムライスが好きです。」


「理想の朝ごはんは?」


「白ご飯、豚汁、玉子焼き、ほうれん草の胡麻和え、ですかね。」


「魚は要らないんですね。」


「魚って食べるのに時間かかるし、朝はできるだけ寝たいので。」


「そういうことか。
参考にしますね。」


「……何の?」


「いつか菅野さんがうちに泊まりに来た時の。」


「え?」


「もちろんその時はちゃんと菅野さんのご両親にも宿泊の許可を取りますよ。」


「そういえば先輩の家、行ったことないですね。」


「俺もうひとり暮らしですし、まだ付き合って間もないので、もしかしたら嫌かなと思って。」


「嫌ではないです。」


「じゃあ来ますか……?」


「……先輩がいいなら。」


「俺はもちろんいいですよ。
じゃあ夜ごはんは俺が振る舞いましょうか?
何か買うか、食べて帰ってもいいけど。」


「先輩料理できるんですか?」


「はい。うちの両親は家にいないことが多くて、自分で作ることもあったので。」


「すごいですね。
ぜひ先輩の手料理食べてみたいです。」


「オムライスにします?」


「します!」