「今日はありがとうね。すごく楽しかった!」


「こちらこそありがとうございました。」


「良かったらまたどこか出かけようね。
次はふたりで。」


「はい。」


あっという間に夕方になって、花純さんは帰っていった。


「やっとふたりきりだ。
花純がいると菅野さんと全然話せなくて困りました。」


「結構先輩のこと置いてけぼりにしちゃいましたね。すみません。」


「いえ、菅野さんが謝ることじゃないですよ。
それに見てるだけでも十分楽しかったので。」


「そうですか?」


「はい。
一緒に回ってくれてありがとうございます。」


「いえいえ、こちらこそありがとうございます。
私も楽しかったです。
あと昼間助けて頂いたのも、ありがとうございます。」


「お礼言うのは俺の方ですよ。
そんなに面識もない俺の幼なじみを助けに入ってくれてありがとうございます。」


「ふふ、私たちお礼ばっか言い合って。なんだかおかしいですね。」


「確かにそうですね。」


「そういえば先輩と花純さんって似てますよね。」


「え?どこがですか?」


若干嫌そうな顔で聞き返してくる。


「人前で好きなことを堂々と宣言するところとか、よく分からないところを可愛いって言ってるところとか。
あとよく喋るし、振られても全く諦めないですよね。」


「そう言われるとそうかもしれません。
昔から関わる機会も多かったせいかもしれませんね。
今は会う機会も減って、今日会ったのも久しぶりでした。」


「そうだったんですか?
だとしたら逆に私が邪魔だったんじゃ……。」


「いやいや、それはありえませんよ。
似た者同士だとしたら、花純は俺の事あわよくばどっか行ってくれないかな、と思ってたと思いますよ。
ほら、さっきもふたりきりで、って菅野さんのこと誘ってたでしょう?」


「それはそうですけど。」


「俺もふたりきりでどこか行きたいんですけど、また誘ってもいいですか?」


特に断る理由もないし……。


「どうぞ。」


「ありがとうございます。」


「あれ。でも先輩、もうじき受験があったりするんじゃないですか?」


「ありますよ、来月に。」


「来月!?
え!?そんな素振り一切なかったのに。」


「まあ推薦ですし、落ちても実力で受かる自信しかないので。」


「あぁ、なるほど……。さすが先輩ですね。」