《菅野愛衣side》


そして月曜日。


「菅野さんおはようございます。好きです。」


以前のように先輩が私の教室の前で待っていた。


「……おはようございます。」


「今日も可愛いですね。」


「あ、どうも。」


やばい。
先輩が休みから復帰した途端おかしくなっちゃった。

前からそこそこおかしいと思ってたけど、こんなに甘々な人ではなかったのに。


「俺ひとり暮らし始めたんですけど、遊びに来ませんか?」


「行きませんけど。」


「えー、一緒にアニメ観たりできますよ?」


……正直それはちょっと魅力的かもしれない。

ひとりで観ると話せる人がいないからなぁ。

やっぱりその場の熱量でぶわぁーっと話したいし、誰かが居てくれるのはいいけど……。


「あ、ちょっと揺らぎました?」


「揺らいでません。行きません。」


「残念。
なんかこうしてると、最初の頃みたいですね。菅野さんが塩対応で。」


「それは先輩が変なこと言ってくるから……。」


「本心ですよ?」


「だとしたら先輩は変な人ってことになりますね。」


「菅野さんが付き合ってくれるならどんな人にもなりますよ?」


「30歳くらいの髭が似合うイケオジになってください。」


「じゃあ10年後にそうなったら付き合ってくださいね?」


無理な要望だから引くと思ったのにそう来たか……。


「10年経ったら私の事好きじゃないと思いますよ?
ていうか、覚えてすらないかも。」


「好きですよ。」


「……何を根拠にそんなこと……。」


「なんとなく。」


「でしょうね。」