けどそんな家でも、誰かと一緒に居るのが当たり前だったせいか、こっちに戻ってきてひとり暮らしの準備が整った途端、本当にひとりになってしまったと思ったら、急に寂しさのような虚しさのようなよく分からない感情がわいてきて、それを誤魔化すために散歩に出たとこだった。


「先輩?大丈夫ですか?具合悪いですか?」


心配そうな顔で俺を見る菅野さん。


「大丈夫ですよ。どこも悪くないです。」


「良かった。」


俺が笑ってみせると、安心したような笑顔を見せてくれた。

その笑顔が何故かとてつもなく胸に刺さって、俺はこの人がいい、と思ってしまった。


「菅野さん。」


「はい。」


「好きです。」


「……はい?」


「好きです。」


「それはさっきも聞いたけど……。
急にどうしたんですか?」


「急に思ったんです。
俺菅野さんが好きです。」


「あぁもう!わかりました!」


顔を赤くしてやめてくださいと言う菅野さんが、今までにないくらい可愛く見える。


「ははっ、可愛い。」


「先輩今日どうしたんですか?
いや、いつもこんな感じだった気も……。」


「俺、1ヶ月休んでたからって菅野さんのこと諦めてませんからね。」


「そこは諦めてくれてもいいんですけど。」


「諦めません。俺、やっぱり菅野さんがいいです。」