「橘さんになんて言ったんですか?
あんなにすぐふたりきりになるなんて。」


「ふたりきりにしてくれ、って。
俺が菅野さんに片想いしてるなんて学校中が知ってることだし、橘もすぐ察してくれましたよ?」


「口上手いですね。
森本さんたちがうまくいってますように。」


「菅野さんってお人好しですね。
知り合って間もない人のために、好きじゃない男と夏祭りでふたりきりなんて。」


「だって森本さん、とてもいい子なんですよ!ティッシュあげただけなのに、菓子折り持ってお礼に来たんですよ?そんないい子応援したくなるじゃないですか。」


「でもそのためにわざわざ浴衣着て、夏休みの大事な一日を俺と過ごすのはお人好しです。」


もしかしてそんなにも私が先輩のこと嫌ってるように見えるのかな。


「浴衣は母が勝手に盛り上がって着せられただけです。
それに先輩のことどちらかといえば好きだし、お祭りの屋台好きだし、今も普通に楽しんでますよ?
だから自分のためでもあって、そこまで私もいい人じゃないです。」


「じゃあ次は何食べたいですか?」


「たこ焼き!」


「今並んでるの焼きそばですよ?またソース系?」


「いいじゃないですか、美味しいし。
好きじゃないですか?」


「いえ、好きですけど。」


「じゃあ決まり!
その後はアイスがいいです。」


私の言葉に笑う声が頭上からふってくる。


「よく食べますね。いいですよ。」


振り返って顔を見ると、いつもより楽しそうな笑顔の先輩がいた。

いっつもニコニコしてるけど、その笑顔じゃなくて思わず笑ったみたいな笑顔。


うん。この顔は確かに整った顔かもしれない。