「そういえば、先輩ってなんでそんなに優しいんですか?
こんなに趣味に付き合ってくれる人もなかなかいないと思いますよ。」


「俺が優しいんだとしたら、それは菅野さんの気を引きたいからですよ。」


「そんな理由で……。嫌になったりしないんですか?」


「しないですね。
それに今では俺もその作品好きですし。」


「先輩いい人ですね。」


「そうですか?」


「はい。」


「菅野さんにそう思われるのは好都合ですね。
恋人に一歩近づいたかな。」


「いやそれはないですね。」


「やっぱり遥斗さん一筋ですか。」


「当たり前です。
遥斗くんは私にとってかけがえのない存在です。」


「もちろん知っています。
遥斗さんのことを考えているときが一番幸せそうですもんね。」


「はい、一番幸せです。」


推せる限りは遥斗くんをずっと推していきたい。

そのためにもできる限りお金を落としたい所存。


「すみません。俺ちょっとお手洗いに行ってきますね。」


「はい。」


料理来るまですることもないし、さっき買ったグッズでも眺めようかな〜。

今回のポップアップのコンセプトは夏祭りで、キャラがそれぞれ着物を着てる。

あー、最高。なんというビジュアル。素晴らしい。
日本文化ありがとうだよ、ほんとに。


と私が心の中で騒いでいると、頭上から聞き覚えのない声がふってくる。

それが自分に向けられたものだというのに、少し時間がかかったように思う。


「そのアニメ好きなんですか?」


「……あ、はい。」


「俺もなんです!そして俺もポップアップに行った帰りで、ほら!」


「はぁ。」


その人は袋を掲げてみせる。さっきのお店の袋だ。

もちろん同じ作品が好きなのは嬉しいんだけど、見ず知らずの人に話しかけられて楽しく話せるコミュ力はない。


「良かったら少し話しませんか?
興奮が収まらないというか、誰かに話したいんです!」


その気持ちもわかるけど、どこの誰かさえわからない人だし、ちょっと怖いというか。


「あ、すみません。仲間見つけたみたいで嬉しくて。知らない人に話しかけられても怖いですよね。」


「……そうですね。」