推し一筋なので彼氏はいりません




約束当日。

コラボカフェ近くの駅に12時に待ち合わせということになっていた。

私はほぼ12時ぴったりに駅について、先輩の姿を探す。


そしてすぐにその姿は見つかる。

私服姿の先輩は制服よりも大人びて見えて、周りの女の子たちがザワついていたせいもあって、よく目立っていたから。


12時になった事に気づいたのか、ふと顔を上げた先輩が周囲を見渡したと思えば、私の顔を見ていつもの笑顔を見せる。

そして片手を振りながら小走りで近づいてきた。


「菅野さん。」


「すみません、お待たせしてしまいましたか?」


「いえ、全然。

それにしても菅野さんの私服姿、とても可愛いですね。
もちろん制服でも可愛いことに変わりは無いのですが、別の可愛さがあります。」


よくこんな注目されているところで素直に褒められるね……。


「……ありがとうございます。」


「では行きましょうか。」


「はい。」


コラボカフェなんてアニメ見てない人からすれば特段楽しいところでもないし、アニメの内容的に男の人は少ないだろうから、余計居心地は悪いだろう。

今日は先輩に、こいつはちょっと……って思われるためだからそれでいいんだけどね。


「今日のために少しアニメを観てきたんですが、結構面白かったです。」


「え、みたんですか?」


「はい。菅野さんの好きな遥斗さんは確かにかっこいいですね。推したくなるのもわかります。」


「わかります!?遥斗くんめちゃくちゃかっこいいですよね!」


「はい。見た目はもちろんプレーもかっこよかったです。」


「そうなんですよ〜。見た目だけじゃなくてもう全部余すことなくかっこいいんです。」


「よくわかります。
バスケが上手いのにそれに驕らないところも素敵でした。」


「ですよね!」


え、もしかして先輩ってとても見る目あるのでは!?

今までこういう創作物に関わってこなかっただけで、結構オタクの才能あるのでは!?


予習してくるあたり真面目だなと思ったけど、こうやって遥斗くんを語れるのは嬉しい。