私がこの世で一番大好きな人

 驚いて、扉の方に視線を向ける。

「タイミング悪いな」

 と彼が不満そうに呟く。
 「リュカ入るよ」と声が聞こえ、先程の黒髪の人が部屋に入ってくる。

 イアンさんが言っていたルークさんってこの人のことだったんだ。


「お邪魔しちゃったかな?」


 私と彼を見てルークさんが言う。
 慌てて離れようとするけど、今度は離してくれない。


「リュカ、恥ずかしいから離して」


 彼は頑なに私のことを離してくれない。
 そんな私達を見てルークさんがくすくす笑う。


「それにしても、リュカが元気そうでよかったよ」

「おかげさまで。あの怪我、兄さんが治してくれたんだろ?」


 兄さん?
 この人リュカのお兄さんだったの?
 だから、どことなく彼に似ていたのか。
 撫で方も彼のものに似ていたのは、お兄さんだからか。


「まあね。それにしてもお前、本当に危なかったんだぞ? あともう少し傷が深かったり、ここに着くのが遅れてたら死ぬところだったんだからな」

「そんなに危険な状態だったのか……。治してくれてありがとう」

「どういたしまして」


 酷いだろうとは思っていたけど、そこまでだったとは。
 本当によかった、と彼の胸に顔を寄せる。


「……っ。あんまり可愛いことしないで。これでも俺、色々と抑えてるんだから」

「抑えてるって何を?」


 するとルークさんがまたくすくす笑う。


「弟の元気そうな姿を見て安心したし、兄さんはこれで失礼するよ。二人の邪魔するのもなんだしね」


 そしてルークさんは扉に向かって行く。
 部屋を出る直前、何かを思い出したように振り向く。


「一応しばらくは安静にすること。わかった?」

「ああ、わかったよ」

「じゃあ、お大事に」


 今度こそルークさんは部屋を出て行く。