黒髪の人はどこかに行ってしまったみたいだけど、金髪の人は彼の横たわっているベッドの側の椅子に座っている。


「それじゃあ、この子のことよろしくね」


 キャロルさんがそう言って部屋から出て行く。
 金髪の人がこちらに向かってこようとするが、それを制して彼に近づく。

 彼はゆったりとした白いシャツを着ていた。
 規則正しく息をしていて、先程まで死にそうになっていたとは思えない。

 本当によかった、と彼の手を握る。

 それから彼が目覚めるまで金髪の人−−イアンさんからリュカの昔の話などをしてもらっていると、握っている彼の指がぴくりと動く。


「リュカ?」


 彼は「ん……」と短く声を出して、ゆっくりと目を開く。

 よかった。目が覚めた。

 彼がゆっくりとこちらを向く。


「リーベ?」

「そうだよ、リーベだよ」


 そう答えると彼は勢いよく体を起こし、私を抱きしめる。

 彼の胸に耳をあてると、とくんとくんと心臓が動いている。
 それに酷く安心する。