私はこの世界では希少だと言われる妖精。

 自分の姿を見たことはないけど、可愛らしい顔立ちをしているらしい。

 私をこんな狭い部屋に閉じ込めている男−−オリバーがそう言っていた。

 オリバーは小太りの男で、いつも下卑た笑みを浮かべている。
 私を暴力で支配している嫌な男だ。

 物心ついた頃にはここに閉じ込められているから、私はオリバーと、その友人だという、オリバーと並んで下品な人たちしか知らない。

 妖精には色んな姿のものがいるらしいけど、私はその中でも希少だと言われる人の形をしている。
 これもあの男が言っていた。

 扉の外から足音が聞こえてくる。

 きっとあの男の足音だ。
 また今日も暴力を奮われる。

 そう思うと恐怖で体が震える。

 嫌だ。逃げ出したい。

 本来魔法が使える私はこんな部屋、簡単に逃げ出せるはずなのに、右足についている魔法を禁じる足枷のせいで魔法が使えないせいで逃げ出せない。

 来ないで。

 そんな私の願いは届かずに足音は扉の前で止まる。
 鍵を外す音が聞こえる。
 重い扉がキィーと嫌な音をたてて開く。

 ああ、あの男が入ってくる。

 逃げ出したいのに、恐怖で震える体は言うことを聞いてくれない。


「リーベ、今日もいい子にしてたかぁ?」


 リーベとは私の名前だ。

 男が気色の悪い笑みを浮かべている。
 本当は無視してしまいたいけど、そんなことしたら何をされるかわからないので、恐怖で震える声で答える。


「……い、いい子に、してました」

「そうか、それはよかった。今日は客がいるんだ」


 オリバーが部屋の中に誰かを招き入れる。