「よーし、成績表配るぞー」


担任の先生の言葉に、夏帆ちゃんは耳をふさいでいた。


「うわあー。まじで無理なんだけど。このあと張り出されるよ?順位」

「え、そうなの? 終わったんだけどー」


私の斜め前の席の夏帆ちゃんと、隣の席の翔平が嫌そうな顔をして成績表を開いた。


「雪、成績表見せて」


私の前の席の大雅くんは私の成績表を覗き込んで、がっくりとうなだれた。


「嘘だろ……オール100点とか……」


………?

大雅くんはすごく頭がいい。授業中にもスラスラと英文を読めるし、小テストはいつも満点だ。  



「……え? 大雅くんはどうだったの?」

「………数学がだめだった。平均96点」


大雅くんが渋々見せてくれた成績表。数学だけが87点で、それ以外は全て90点台だった。


「えー!? 嘘、大雅やばくない? 翔平は?」


大雅くんの成績表を覗き見た夏帆ちゃんは、ときめきの顔で大雅くんを見つめている。


ふふっ、夏帆ちゃん可愛いな。


「俺は全部89点でーす! 数学、大雅に勝っちゃった☆」

「私は……全部68点!?」


夏帆ちゃんも翔平も、きれいに数字が揃っている。


「は? 俺だけ仲間はずれみたいじゃん」


大雅くんは、なんだよー、と言って笑っている。