お兄ちゃんは女子力が高いので、私より唇がつやつやだ。

女子力、というものは全部お兄ちゃんに持っていかれたみたい。


そんなことを考えていると、お兄ちゃんが口を開いた。



「ねぇ、雪?」

「ん? なにお兄ちゃん、暗い顔して」

「………」

「雪、もしかして好きな人でもできた……?」


突然のお兄ちゃんの言葉に、私はコロッケをつぶしてしまった。


「い、いきなりどうしたの?」

「……何その反応。まさか図星?」


コ、コロッケ……。



「私、もう一個コロッケもらうね!」

「雪? それ明日のお弁当用……?」



な、なにか言いたげだなとか思ってたら……!

もぐもぐとコロッケを食べ進める。


「雪にもとうとう彼氏が……!」


好きな人とも言っていないのに勝手に彼氏と解釈する兄に、私はため息をついた。


葉月先輩が彼氏なら、幸せなんだろうな………。


「………っ! 何考えてるんだ私!」

「え? 何考えてたの、雪?」


自分で断っておいて、そんなことを考えるなんて失礼だ。

大体、なんで葉月先輩が出てきたんだろう。


葉月先輩、学校でも図書室でも見たことないけど、なんで図書室にいたんだろう。


「………変な雪」


なんだか顔が赤くなっている気がして、両手で頬を冷やす。

それでも熱を帯びる頬と変な感情に、私は戸惑った。