「おーい、秋華さーん?聞こえてる?」
誰かが目の前でしゃがんでこっちを覗いていた。我に返った。急だったから驚いて声を上げると、
「ごめんごめん。聞こえてなさそうだったから」
「ああ、こちらこそごめんなさい!ついぼーっとしてしまって…」
逆に謝られてしまったのでこっちも謝った。すると、その先生が自己紹介をしてくれた。
「初めまして、池下名奏斗です。君の担当医さんの後輩で、看護師をしています。今は25歳で、主に注射とかの担当かな。先輩に秋華ちゃんの注射とかお願いって走りながら頼まれたから、早速やってくね」
そう言って準備を始めてるけど、こっちは緊張してる。先生が佐々木先生にも負けず劣らずの美丈夫でなのもあるだろうけど、何よりも私は注射が嫌いだ。でも逃げ出したい、という気持ちは不思議となかった。
「じゃあ、やるね。痛かったらわめいていいよ」
「なっ、そそんなことしません!」
そういうと僅かに先生の口角が上がった気がした。そして腕に消毒を塗ったあと、いいよって言うまで目をつぶっててと言うので目をつぶった。
しばらくするといいよと言われたので、目を開け