ると、
「はい、終わり」
腕には絆創膏が貼ってあるけど、痛さなんて感じなかった。そして今までの先生の中でも圧倒的に、早い。
「早いですね…それに全然痛くなかった…」
思わずそう言うと、先生は苦笑いして、
「良かった。わめかれたら適わないからね」
そう言った。どうしてそんな早いかきくと、
「君は、白衣高血圧症って知ってる?」
そう聞かれたけど分からなくて首を横に振ると、
「子供の頃、病気で入院してた時期があるんだ。その後、手術して治ったんだけど、その頃から、病院がたまらなく怖くなって、特に注射が怖くなったんだ。でも、そのそんな思いを持ってる人はいっぱい居るだろうから、看護師になって怖くない注射を打とうって思ったんだ」
驚いた、先生にそんな過去があったなんて。きっと先生にとっての''怖くない注射''が今の注射だったんだろう。確かに不安はあっても、実際は打たれた感覚がなかった。
_ きっと驚いたからだ。ひとり病室の前で立っている人がいたなんて気が付かなかったんだ。_