「…ひかるちゃん、帰ろう。」

僕は何にも気づいていないふりをして車いすを押す。

ひかるちゃん?返事をしてよ。

「ひかるちゃん」

一滴の涙が頬を撫でる。

この一滴以外その後流れることはなかった。

この一滴に意味がたくさん詰まっていたと思う。

「ひかるちゃん。着いたよ」


僕は何事もなかったかのように、眠っている彼女をベッドに戻す。

目を覚まそうよ、ひかるちゃん。

そう思っていたらたまたま通りかかった先生が病室に勢いよく入ってきた。