僕が戻ると椅子の背もたれにもたれかかっているあやの先輩は僕を見つけてニコッと笑った。
「優星、こっちだよ!」
「お待たせしました」
僕はなんとか平静を保っていた。
『だってあの先輩って……』
「あやの先輩」
「ん?」
いつもの笑顔。
その笑顔に僕は何も言えない。
「いえ、なんでもないです」
「そう?」
僕が買ってきたお茶を受け取り早速飲み始めているあやの先輩。
袖が少しずり落ちていた。
そして僕は見てしまった。
「あやの先輩、その痣って……」
「え?……あ、これはね〜」
腕には青紫色の痣があった。
見たところ1箇所にしかないみたいだ。
あやの先輩はなんでもないという笑みを向けていた。
「これは前に思いっきりタンスの角にぶつけちゃってさ〜!少しずつだけど治ってきてはいるんだよ」
そう笑って話すあやの先輩に僕はさっき猪里から聞いた話を思い出さずにはいられなかった。
『だってあの先輩って……いじめられてるって噂があるんだよ』