私の記憶にある幸希はいつも笑っていた。
けれどいつからだったのだろうか。
いつも同じ笑顔を私に向けていた。
それに気づかなかったのは私が幸希のことをちゃんと…見ていなかったからだ。
『貴方…可愛い女の子よ……』
妻の出産に立ち会ったあの日、初めて見た私たちの娘……。
元気な子だった。
『私たちの幸せな希望…幸希……なんてのはどうだろうか?』
『とても素敵ね…!幸せな希望で幸希。幸希、生まれてきてくれてありがとう!』
愛おしそうに幸希を抱きしめる妻を私は涙ぐみながら見守った。
幸希は私たちの幸せな希望だ。
私が……私たちが幸希を幸せにする。
そう心の中で誓った。
そして月日があっという間に過ぎ、幸希が幼稚園に上がる頃には私は仕事が忙しくなかなか妻と娘の幸希と一緒にいることが少なくなった。
家の事や幸希のめんどうも全部妻に任せ切りだった。
『ただいま』
そう帰ると部屋は暗かった。
もう寝たのか?
そう思って中を覗いてみるとほんの少しだが明かりがついていた。