『大丈夫』
絶対に大丈夫なんかじゃなかった。
本当は無理して笑って強がっているだけだった。
僕はそんな幸希先輩をたくさん見てきた。
だけど僕はいつも『大丈夫』その言葉を信じたかった。
踏み込んで欲しくないと言うように幸希先輩は強がるから……でも。
『優星』
本当はきっと……踏み込んで行けばよかったんだ。
そうすれば…こんなことには…ならなかった。
「…うか。では息を引き取ったら知らせろ。息があるうちは最善を尽くせ」
そんな冷たい話し声が聞こえた。
とても冷たくて……そして…。
「君は…葉山優星……か?」
そう言って僕を見つめる瞳はとても冷たく、目の前にいるはずの僕がその瞳には映っていなかった。
無表情で何を考えているのかわからなくて。
「うちの娘が随分君と一緒にいたみたいだがもういなくて大丈夫だ」
「え?」
急に何を言っているんだ?
僕はそう思った。
だって…だって……。
「あの子はもう私の跡を継ぐ子だからな。貧乏人と慣れ親しむ必要ももうないだろう。今までは見逃していたが」