あの雨の日、私は死のうとしていた。
制服の上にフード付きの上着を羽織り、しっかりとフードを被る。
こっそりと家を抜け出して、傘をさして私はゆっくりと死へと続く道を歩いた。
私があの時…ゆっくり歩かず走っていたらきっと運命は違っていたと思うの。
私が走っていたら君よりも先にあの場所に着いていた。
だから君に会うことなんてなかった。
でも……私は君に出会ってしまった。

橋に近づくと、すでに誰かがいるのがわかった。
その子も雰囲気的に飛び降りるんだなと思った。
なんとなく同じ気持ちを持つ人ならわかる。
ずっと抱えてきたから。
だから私は止める気もなかった。
ましてや声をかける気なんて…なかった。
けれど…見えてしまったの。
聞こえてしまったの。
『…一瞬かな……?大丈夫…っ』
その声は震えていた。
でもそれよりも私は聞き覚えがあったの。
その声に……。
だから思わず声をかけてしまった。
『ねぇ、君……』
私が声をかけたのに驚いたのだろう。
勢いよく後ろを振り返った男の子はとても焦っていた。
そして私は顔と制服を見て確信した。
やっぱりあの時の男の子だ…と。