放課後、カチャ・カチャとキーボードを打ち込む音だ部屋の中に響いていた。ここは生徒会室の隣にある会長室

 10畳程の広さで窓側に両引き出しの机と椅子、パソコンが置かれてある。打合せ用に四角のテーブルに2人掛けのソファが向い合せに2つ置いてあった

 一人で缶詰になりたい時は便利な部屋だ

 「どうや、うちの双葉」

 ただし、この人、沢村会長がいなければの話だが・・

 「どうって?別に」

 ソファにゴロンと横になっている会長を尻目にパソコン入力をして行った

 どうやら、昨日から会長の妹、沢村双葉とオレが付き合っている事になっているらしい

 「かわええやろ。ちょっと性格はきついけど、ええ子やで」

 はい、はい。まともに聞いていたら頭が痛くなる
 
 「だから、双葉とつきやってや。こーちゃんなら俺も安心やし」

 「お断りします」

 「即答かい。つきおうとる人おらんのやろ。それともあの子が本命?」

 「あの子って会長の妹の事?」
 それならさっきから違うと言ってる筈だが・・まだ別の話が流れているのか?

 「なんや、こーちゃんがうちの学校の生徒を背負って帰ってるのを見たって」

 オレが?
 それなら晶を背負って帰った時の事だ

 「は・・」
 前髪をかき上げコーヒーを一口飲む

 晶が本命。でも妹

 「好きな子はいますが、うちの生徒ではないですよ。妹さんにも言っといて下さい」

 今は、別に好きな子がいるとはぐらかすしかない

 「その子には、思いを伝えたんか?」

 「内緒です」

 ニッコリ笑って、パソコンに向き直し、画面に『晶・・好きだ』と打ってバックスペースで消した

 たった数文字の思いが伝えられない。晶は今何をしているのだろう?

 

 勢いよく会長室のドアがノックされ、書記の岡本が駆け込んできた

 「沢村会長!大変です。妹さんが・・」

 「双葉がどないしたんや!」

 会長はソファから立上がり岡本に詰め寄った

 「ケンカしたらしく鎌田先生に指導室に連れて行かれました」

 「なんやと~ ケンカの相手は誰や」

 「さぁ、2年生かと」

 「あの、ジャジャ馬!ちょっと指導室まで迎えにいってくるわ」

 「えぇ。そうしてあげて下さい」

 ケンカねぇ。少々の気の強さじゃないじゃないか