「痛っ。ちょっと桜場もう少し優しくしてよ」
 放課後、即効でサッカーに行こうとした桜場を引き止めた

 「優しくって言ったって、俺こういうの苦手なんだよ。生々しいだろ。うわっ」
 桜場は私の両手の傷を見て声をあげた
 大袈裟な・・・
 傷は薄い膜がはって半分は塞がってるじゃない

 「男でしょ。生の魚がさばけるくせに」
 
 「魚と人間は違うだろ。しかしサバの味噌煮を作るだけで、ここまでなるかよ・・」

 呆れ口調で桜場は傷口にキズバンを貼っていってくれる

 まぁ、包丁で切ったのと、生姜の皮むきの際自分の手の皮もむいたかなーなんて言ったらバカにされるので言わないけど

 「皇先輩も大変だよなぁ。寝床を占領され、傷の手当をして、大量に料理を食べさせられ・・学校では彼女説の噂に、生徒会の部費問題・・と」

 「うっ、あえて言わないでよ・・。前半3つは私の事じゃないよぅ」

 「お前、何もしない方が皇先輩にはいいんじゃないの?しなくても危なっかしいからな。ほい、終わり」

 「ありがと。やっぱり皇兄怒ってるよね。もし同じ立場だったら桜場も怒る?」

 「俺か・・」
 桜場には未由ちゃんという妹がいると最近知った
 
 「呆れはするけど、怒らないな。皇先輩怒ったのか?」

 「会話してないから、解らないの」
 かれこれ2日間は言葉を交わしてないどころか、姿も見てない

 「本当に一緒の家の住んでるのか?」

 「・・・」

 それを聞きたいのは私の方だよ・・




 桜場と別れたあと、音楽室に向かった
 実は、お母さんから狩野先輩宛の荷物を預かったのを渡さないと

 音楽室に続く廊下にピアノの音が流れてきていた

 「失礼します」
 音楽室の扉を開けると、ピタッと音が止んだ

 「いらっしゃい。晶ちゃん」
 「こんにちは、先輩。今日はお母さんから荷物をあずかりました」

 リュックから白い封筒を取り出し、先輩に渡す

 「手・・どうしたの?」
 先輩は自分のてに私の掌を乗せた

 「痛そう。大丈夫?元気もなさそうだし」

 「見た目より平気なんですよ。でもちょっとへこみ気味なので、元気の出る曲お願いできますか?」

 「OK」

 そして、『TOMORROW』が流れ始めた