「よっ」
 ポンッと背中を叩かれ、私は伏せていた顔を上げた

 「桜場・・」
 「元気ないじゃん。さては失敗しただろ?」
 「う・・」
 「なんだ、図星かよ」

 あれって、失敗した事になるんだよね

 
 『もう、大丈夫だな』
 ポンポンと優しく頭を撫でられて、私はうっすら目を覚ますと、皇兄のベットの上だった

 上半身を起こし、部屋を見渡したけれどそこには誰もいなかった

 頭をポンポンってされた気がしたんだけど・・・?
 頭に手をやり、そこでゴツゴツした感触に初めて気付いた

 「手・・」

 両手を見ると絆創膏と軟膏を塗ったガーゼに包帯が巻かれていた

 「皇兄!」

 いそいでベットから下りると、部屋を出て階段を駆け下りた

 「皇兄!お母さん、皇兄は!?洗面所?」

 リビングを覗き、洗面所も覗き、トイレもノックするが皇兄の姿はなかった

 「皇ちゃんなら、もう学校に行ってしまったわよ」

 「え・・」

 リビングのソファに毛布が折り畳んであった

 「お母さん、皇兄は昨夜ここで眠ったんだね」

 「お母さんが来た時はとっくに起きていたけれど、どうしてソファなんかで眠ったのかしら?きっと、転寝でもしたのね」

 違う

 私のせいだ。私が皇兄のベットを占領したから、ソファで眠るはめになってしまったの

 「まぁ、その手どうしたの?」

 「これは・・」

 お母さんは私の手を見て驚いている
 この反応だと、手当てしてくれたのは皇兄に間違いない
 恐らく、私が目を覚ます寸前まで側にいてくれたんだ
 頭を撫でられた感触が残っているもの

 流し台には、揚げ出し豆腐を盛った皿と、サバの味噌煮の鍋が洗ってあった

 「お母さん、サバと・・その」

 揚げ出し・・皇兄、食べてくれたのかな・・?何か怖くて聞けない
 もしも、生ゴミに出されていたらショックだよ
 チラッと生ゴミ処理機を覗いてみたけど、捨ててなかったので、ホッと息をついた

 「皇ちゃん全部食べて行ったけど、あれは作りすぎよ晶ちゃん」

 「・・・」

 「あと、皇ちゃんからの伝言。確か・・『もう、余計な事しなくていいから、自分の事だけ考えろ』だったかな。だからね、晶ちゃん」

 余計な事・・かぁ
 結局、皇兄に迷惑をかけた事になるもの。言われるの無理ないよね