カチ・カチ・カチ
 腕時計の秒針の音が心地良い

 昔からこの音を聞くと、落ち着いてよく眠れる

 紫色の文字盤の腕時計。オレの白色の文字盤と取替えた事に晶は気付いただろうか?

 腕から時計を外すと両手で握り閉め、胸に抱えてつぶやく

 「好きだよ。あきら」

 『じゅる』

 「!」

 何だ!?今の音!
 急いでベットから起き上がり辺りを見回した
 電気は点けていなかったが、月明かりで部屋の中は容易に見えた

 必要最低限の家具しか置いていない為、異変はすぐに解るはずだ

 「気のせい・・か?」

 何か引きずるような、すする様な音がしたと思ったが・・?

 立ち上がり、部屋の外の様子も確かめたが遠くで犬の遠吠えが聞こえるくらいだった

 「オレ、疲れているんだな・・」

 明日・・いや時間は0時を過ぎてるいるから、今日学校に行けば土日の休みに入る。休みの方が余計に疲れるだろうな。嫌でも晶と顔を合わせる機会が多くなってしまう

 日曜日・・また、あいつはお菓子作りをするつもりなのだろうか?
 
 オレ以外の男にあげるために・・・

 腕時計を机に置くと、ワイシャツを脱いだ

 シャワーでも浴びて頭をスッキリさせるか
 
 入口のドアのそばに洗濯済のシャツが置いてあったのを拾い上げる
 その横にくしゃくしゃになったシーツが無造作に置かれていた

 母さん、交換してくれたはいいが、交換後のシーツを置き忘れたな
 それに、シャツに紛れて晶のキャミソールも混ざってるし

 「晶の・・」

 『じゅるる』

 「!」

 やっぱり気のせいなんかじゃない。何かいる
 何処から聞こえてきた?ベットの方向から聞こえたような・・

 ベットの上には何もいない。ベットの下はタンス式になっていてこれも違う

 「あ・・まさ・か!?」

 ベットは壁に寄せてあるが壁との間に15Cm程の隙間を空けてある
 
 急いでベットの上から隙間を覗くと、そこには身体をちぢこました晶が眠っていた

 「うそ・・だろ・・お前・・」
 自分の部屋で寝てるんじゃなかったのかよ・・

 言葉にならず、口元に手を当てる。信じらんねぇ
 
 しかも、見事にハマってるな・・窮屈じゃないのか?

 ・・とそんな事を関心している場合じゃないのにオレはしばらく晶に見惚れていた