「ホント、信じられないよね?私、音楽のセンスなんてないのに・・部員が足りないのかな?」

それはそれで、部員を集めるのは大変なんだろうけど・・

「いや、あいつらの目的はそうじゃなくて、、音楽室の・・先輩と一緒に登校してただろ?」

ん?
突然話が、吹奏楽の勧誘から、今朝の狩野先輩との登校に話が飛んだ

「そうだけど・・・それと、勧誘と何かあるの?」

『あー』若干、フリーズした桜場は、コリコリと鼻の頭をかいた

「いや、まぁ、もう、勧誘ではない事だけ覚えておいてくれ。てか、お前って・・本当に皇せんぱ・・嫌いいや、送るよ家まで」

「いいよ。部活でしょ。私のためにここまで来させちゃってごめんね」

 サッカー部の桜場は毎日、陽が落ちるまでサッカーの練習をしているサッカーおたく?でも、何かに夢中になれる物を持っているって、羨ましいよね

 「今日は先輩達が部費の事でもめててさ、部活になんねぇんだ」

 『あーあ』とつまらなさそうに言うと、桜場は私と一緒に歩き出した

 「部費って?」

 「ほぼ決まっていた予算が、生徒指導の鎌田によって変えられたらしいぜ。それを生徒会が待ったをかけたって。何でも、生徒会長が『うちの桜庭がやります』って啖呵をきったって」

 「えっ?」

 私は足を止めた。その桜庭って皇兄の事だよ・・ね
 
 「それって、大変なんだよね。えっ桜場!?」

 横にいると思ったら、桜場は2m先にいた

 「こっちだろ、お前の家」

 「そうだけど、今日はサバを買いにスーパーに行くの」

 「サバ?へー。だったら俺のとこに来いよ。魚屋なんだ」

 桜場は私の所まで戻ってくると、手を取ってまた一緒に走り出す


 「ほへ・・」

 本当に魚屋だった。商店街のど真ん中で、私の知らない魚が沢山表に並んでいる
 店先では威勢のいいおじさんが魚を片手にターゲットの主婦達に声を掛けていた。その横で、優しそうなおばさんが勘定をしていた

 おじさんの大きい声や、おばさんの目元、桜場にそっくり

 「ただいま。サバある?2匹持ってくぜ。来いよ」

 桜庭は氷からサバを掴むと、裏口から台所に入って行く。私も後について行った

 「2枚に卸せばいいだろ」
 まな板に魚を乗せると、鋭い包丁を取り出した

 「出来るの?」

 「これでも、魚屋の息子」

 両腕まくりをし、手を洗うと慣れた手つきでサバを卸し始めた

 「すごい!」
 横でパチパチと拍手をする私

 「『にわ』ボールに水と塩を入れて。2分たったら、水からあげろよ」
 
 「う・・うん」
 言われるがままに、実行に移す

 「冷蔵庫に生姜もあるから、持ってけよ。サバの味噌煮作るんだろ。皇先輩好物だもんな・・やばっ」

 桜場は急いで口元を押さえて、やばそうに私を見た

 なんで、なんで桜場が皇兄の好物知ってるの!