皇兄の優しさに気がついた時、片目から涙が流れ落ちた
「やだ、どこか痛いの?」
 
先輩の問いに私は大きく首を振った

「いえ・・ちが・・私、いつも後から気付くんです。どうしよう私、皇兄の気持ち知らないで、酷いこと言って、どうしよう先輩」

先輩は立ち上がり、私に駆け寄ると肩をポンポンと叩いた

「少し、お茶を飲んで落ち着きましょう」

緑茶を勧められ、一口飲んで「苦いです」と呟いた

「苦かった?でも落ち着いたでしょ。じゃぁまず、自分が出来ることから考えましょう。まずは何が出来る?」

「謝る。皇兄にごめんなさいって言う」

「そうね。酷い事を言ったのなら、謝らないとね・・?」
言いながら、先輩は首をかしげた

「間違ってたらごめんね。さっきから言ってる『皇兄』っていうのは、桜庭君の事?」

「はい」

「あなた、桜庭君の妹なの!?」

「そうですけど」

この様な反応をされるのは、慣れっこになっている
普段の皇兄からは、妹がいるとは思えないらしい

先輩もその一人

「驚いた、桜庭君に妹がいたなんて。あなたが妹に見えないって訳じゃないのよ」

「いいですよ。慣れてますから」

冷静沈着・頭脳明晰な皇兄と天然で鈍い私だと、兄妹だというギャップが大きすぎるよね。自分で言ってて軽く落ち込むけど

「あの?」
今だ驚きを隠しきれない先輩に声をかけた

「ごめんね。そうか、だから桜庭君元気がなかったのね」

「皇兄、元気なかったですか?」
朝も顔を合わせてないし、皇兄の様子がわからない

「あなたのせいじゃないわ。今朝からあのウワサで、あちこちで呼び出されているみたい。あ、いや、私が言いたいのはこんな事じゃなくて、大丈夫よ桜庭君なら許してくれるから、謝ってみなさい。あと、食欲がなさそうだったから、好きなご飯とか作ってあげたら?」

皇兄の好きな食べ物?

「何か思い当たらない?」
 
そうだ!

「サバの味噌煮と揚げ出し豆腐」
元気良く叫ぶと先輩はクスクスと笑い出した

何かおかしいこと言ったかな?

「笑ってごめん。あなたといると、桜庭君の違う面が見れて楽しくって。でも、うまく行くといいね。がんばって」

「はい」
今日は早く帰って、サバと豆腐を買いに行こう

上手く出来るかな・・・?

うううん。上手く作るの!!

そして皇兄にちゃんと謝りたい・・