昔からそうだ

お父さんよりもお母さんよりも、誰よりも一番私の体調が悪いのを気づいてくれるのは、皇兄だった

家族旅行に行った時もそう。慣れない靴で靴ずれが出来てしまった私に気付いてくれたのも皇兄、当時12歳

『靴、脱げよ』
お父さん達を先に目的地に行かせた後、私をベンチに座らせた

『なんで?お父さん達、行っちゃうよ。置いてかれるよ』
『痛いんだろ。足』
かがんで私の足首を掴まれ、ゆっくりと靴を脱がされる

『・・っ』

白い靴下にも、薄っすら血が滲んでいた

『痛いなら、痛いって言えよな』
『痛くないもん。大丈夫だよ』
急いで靴を履きなおそうとする私

『たくっ』
皇兄はムッとして私の靴を掴むと、力任せに放り投げた

『あ・・』
呆気にとられる私をよそに今度は、靴下を脱がせそれも放り投げた

『ほら、これで何処にもいけなくなった。諦めろ』
ぶっきらぼうに言うと、濡らしたハンカチを私の踵に当てた

『うっ。うっ。』
私はと言うと足が痛いのと、靴を捨てられたのとが交差して泣いていた
その間にも、皇兄は絆創膏を取り出し、手際よく傷口を手当していた

『ほら、終わった。泣くなって』
『・・皇兄なんて・・嫌い』
『あぁ。それでいいから、泣くな』
私の頭をくしゃと撫でると、かがんでいる背を私に向けた

『それだと、歩けないだろ。来いよ』
『皇兄なんて、嫌いなんだからね』
念を押して、皇兄の背中に負ぶさった

『あぁ、わかってるよ』
私がしっかり背中に乗ったことを確かめると、皇兄は歩き出す
放り投げた靴も、靴下もキチンとと拾いながら・・

『なぁ晶、辛い時は辛いって言えよ。どうもお前は気を使って言わない所があるだろ。いつも、オレが気付いてやる訳にはいかないからな』

『そうなの・・?』

『でも、お前の側にいる限りは、見守ってやるよ』

当時、成長期の皇兄の背中は大きくて、温かくて私を安心させてくれた


  
あれから5年、皇兄はあの時の言葉通り私を見ていてくれた

生物の授業の時も、リビングで苦しかった時も・・助けてくれたのは皇兄

『皇兄なんて・・きらい』

私、なんて事を言ったんだろう

どうしよう。私、皇兄に酷いことを言った。謝らなければいけないのは私