P・P・P・P 

目覚ましの音は、時間が経つにつれて大きくなっていった

「うるさいなーもー」

音の方向に手を伸ばし、スイッチを切る


朝、不思議と頭はスッキリしている。昨夜いっぱい泣いたからかな

手鏡で昨日の痕跡がないか確認する

「大丈夫みたい」

制服に着替え、机の上の男物の腕時計を取った

これは、皇兄の高校入学祝いにお父さんが買ってくれたもの

男女ペアで買ってくれたんだけど、文字盤の大きい方がお得に思えた私は頑固として、男物の方が良いと言い張った

『仕方ない。晶にも同じもの買ってやってよ』

皇兄が呆れた様に、お父さんを説得してくれたおかげで、皇兄と文字盤だけが色違いの腕時計仕様になっている

「はて・・?」

私は首をひねった。私の文字盤って白だったっけ?
 
無意識に見てたから確信はないけど、この色だったっけ?


「晶ちゃーん。そろそろ起きなさい」

私の疑問はお母さんの声でかき消された

「はーい」

急いで左手首にはめると私はキッチンへと降りて行った

「やぁ。おはよう。晶ちゃん」

「おはよ、お母さんお腹すいた」
 
リュックをソファに置いて、テーブルに付いた

考えてみたら、夕飯を食べないで寝ちゃったんだよね

「トーストに何付けて食べるの?」

「ジャム、イチゴジャム」

何で今更、そんな事聞いてくるんだろう?

それに、お母さんの声がいつもより低い気が・・

「風邪でも引いたの?声が・・え!?」

顔を上げると、狩野先輩がパンにジャムを塗っていた

「あ・・え?狩野先輩?」

「ジャムはこれくらいでいいの?」

「いい、いいです」

両手でトーストを受け取るが、驚きのあまり止まってしまった

「あの・・なぜ先輩が?まさか、お母さんが余計な事を言いました?」

お母さんは、妄想で突っ走っていたから私が2階に行った後も、それが続いたのだろうか?

・・って言うか、私、先輩や萌ちゃんを放り出して寝ちゃったんだ

「先輩、昨日はすみません。私・・」

「僕の方こそ、具合が悪いの気づかないでごめんね。桜庭君に聞いたよ」

「いえ・・そんな」

トーストを半分に割り、食べ始める

皇兄の姿が見えないなぁって思いながら・・