「な・・何するの!降ろして!」

晶はオレの肩を掴んで、小さく叫んだ

「黙って。母さん達に聞こえるだろ」

「・・」

晶の腕の力が緩くなった。オレは晶の身体に負担がかからない様に抱きかかえ直し洗面所を出ると、階段を上り始めた

もっと抵抗されるかと思ったが、晶は黙ってオレに抱かれていた

顎のラインをオレの肩にもたれかけている

「う・・う・・」

オレの肩に生暖かいものが落ちてオレのシャツを濡らした

晶の身体が小刻みに震えている

泣く時まで、『黙って』と言ったオレの言葉を守って、声を殺している

カチャ

部屋のドアを開け、晶の部屋の電気を付けた

「降ろすぞ」

「うっ、うっ」

晶は首を横に振り、細い腕をオレの首に巻きつけて、降りようとしない

「自分の部屋だぞ」

「やだ」

「やだって、体調良くないだろ」

「うっ・・だって・・また・・や・なことするでしょう」

「しない」

もうしないと決めた

晶の腕を片方ずつ首から外すと、ベットの上に座らせた

「泣くなって」

ポケットからハンカチを取り出し、晶の涙を拭き取る

「わ、私だって・・こんな・・・きらい・・皇兄なんて・・きらい」

「あぁ」

「勝手に話を進めるお母さんも・・嫌い」

晶は両目から涙を流し、オレの胸を握りこぶしで叩いた

「みんな・・嫌いよ。私がいったいどんな思いで・・うっ・・痛・・」

お腹を押さえながら、晶はベットから体制を崩していった

毛布をはぐり、急いでベットに寝かす

「腹、痛いのか?」

「う・・ん」

そうだ。和泉から薬を預かって来た事を思い出す

「ちょっと待ってろ。薬持ってくるから」

「いい。寝てれば大丈夫」

晶は目頭に手を当てた

「だが・・」

「薬ばかりに頼ると、癖になっちゃうから」

プイっと晶は壁側に寝返りを打った

あ・・オレは息を呑む

晶にこんな事頼める事ではないのは分かっている

だが・・

「晶・・最後に、お前が眠るまで傍にいてもいい・・か?」

晶と二人きりになるのはこれが最後

晶を苦しめて、自分勝手だと思う

「だめ・・だよな?」

「・・・ん・・いいよ」

ほぅ・・オレは崩れるように床に座り込んだ