「あら、そうなの。じゃぁ付き合いちゃいなさい。お母さん賛成」

・・だ・・誰か、この人を止めて・・・

私の顔に血が上っていくのがわかる。狩野先輩の顔が見れない

こうなるとお母さんは止まらなかった
ちゃっかり、狩野先輩の両手を握り締めている

「響さん、この子おっとりしてて、要領もよくないけど、優しいし、家庭的なのよ。親バカかもしれないけど、主人似で顔もそこそこカワイイし、だめかしら?」

「おーかーあーさん!先輩が困ってるでしょ。すみません、すみません。気にしないで下さい。」

狩野先輩に何度も頭を下げ、握っている手を引き離すと、お母さんを睨んだ

どうせ、お母さんの事だ。クールな皇兄と狩野先輩を並べて、近所の奥様達に自慢したいに違いない

あぁ、もう穴があったら入りたい

萌ちゃんからも何か言ってよ。萌ちゃんに目で訴えかけた

「私もお似合いだと思うけど」

「萌ちゃん!」

それじゃぁフォローになってない・・て

「僕も晶ちゃんはカワイイと思いますよ」

「え・・」

コーヒーを飲みながら、狩野先輩はゆっくり私を見た

狩野先輩まで・・

「わ・・私は・・」

コメントに困っている私をよそにお母さんはリビングの入口に同意を求めた

「ね。皇ちゃんもそう思うでしょ」

え!?

振り返ると、リビングの入口に鞄を小脇に抱えた皇兄が立っていた

「玄関まで声が響いてるぜ。晶」

ため息まじりの皇兄の低いやわらかい声

私の中で、昨夜の黒い低い声と今の声が頭で交差した

「お帰りなさい。皇兄」

私がそう言うと、皇兄は少し目を見開いたが、すぐにいつもの表情に戻った

「ね、ね。皇ちゃんも晶ちゃんと響さんお似合いだと思わない?」

もう、やめてってば。お母さん

皇兄はきっと・・

「似合うかどうかは知らないけど、いいんじゃないの」

え?皇兄の意外な言葉に私は動揺を隠し切れず、ソファから立ち上がった

「カ・・カステラ、皇兄の分も切ってくる」

足早にキッチンへと向かう

だって皇兄、昨夜は私の事、無防備だから危機感を養った方がいいって・・狩野先輩の事だって裏では何を考えているか分からないって・・それで私の事を怒ってあんな事を・・

私、皇兄の方がわからないよ・・