「はぁ、まるで警戒心の強い血統書付きの猫みたいね」

「・・・・」

知らない女にオレが晶の兄だと指摘されたため、つい表面上の自分からもう一人の自分を出してしまった

オレは黙り込み、側のベットに腰を掛け足を組んだ

なぜこの女が、オレの事を知っているのか分からないが、ここは黙っていた方がいい

「何も言わないのね。まぁいいわ。晶ちゃんならさっきまでそのベットで休んでいたのよ」

女はオレの掛けたベットを指差した

晶がこのベットに・・。白いカバーの枕に手を伸ばすと、晶の細い茶色の髪が一本落ちている

「心配?」

「・・・・」

女の問いに答える気もなく、晶が寝ていたシーツに手を当てた

温もりは感じないが、晶の寝顔が容易に想像がついた。身体は仰向けで、顔だけ右にうなだれて、ドナルドダックのような口先

そして決まってお腹に左手を添えて、右手は布団から出しているんだっけ

「桜庭君・・・?」

「あれ?何か言いました?」

しらじらしく聞き返してやると、女は椅子から立ち上がった

「まったく、相変わらず生意気な所は変わってないわね!その調子で妹に傷つけるような事を言って、倒れさせたわけね」

えっ?

女の言葉に、思わず声が出そうになった。晶は昨夜の出来事をこの女に話したのだろうか?でも、貧血で倒れたのはいったい・・口元に手を当てる

「思い当たる節がある様ね。女の子身体はデリケートなのよ。あの子は気づいていないけど、特にあなたの言葉に過剰反応してそれが月経痛を引き起こしてるの」

腹を押さえていたのはそのせい?

そして、引き起こさせた原因はオレ・・

「中学の時も『自分と兄妹だと言う事はいうな』って言って、次の日晶ちゃんが倒れたの覚えてない?」

女の言葉に目を伏せた

あぁ、思い出したよ

『お前と兄妹だと思われていると、オレまでバカに見られるから兄妹だと言うことは言うな』

・・・と晶に言った。それはあいつが他の女から預かった手紙や、言葉をそのままオレに伝えて来るからだ

好きな女から、別の女の『好き』という気持ちを伝えられるのは、当時のオレには苦痛だったから

そして次の日、晶は体育の授業中倒れた

体育の授業で体育館が一緒だった、オレの姿を見て