1階にある保健室のドアの前でオレは立ち止まっていた
 
生物の授業中、具合の悪くなった晶は保健室に連れていかれた

会いたい

貧血らしいが、真っ青な表情を目の当たりにしたため、晶の血色の良い顔を見るまでは不安で仕方がない

・・だが、あいつはオレと顔をあわせたくないはず。倒れそうになる前もオレの姿を見ようとしなかったしな

たかが、厚さ2cm弱の扉を開けるかで、なんでこんなに悩んでいるんだ?

既に帰っている可能性もある
晶がいるかどうかも分からないのに・・

あー。くそ!

自分自身に気合を入れ、保健室のドアに手をかけた

引き戸を開けるため力をかけた時、一足先に別の力がかかり反対側から開く形になった

 
「あ・・・」
オレとドアを開けた白衣の保健医が同時に声をあげた

保健医は黒髪を後ろで一つに束ね、晶より少し背が高い

・・にしてもお互い驚いた訳だが、彼女の方はオレを凝視していた

なんなんだ・・?

オレは目線をそらすと、保健室のベットを見回した

晶の姿はない

「失礼」

軽く会釈をし、立ち去ろうとするオレの上着を保健医がしっかり掴んだ

「待ちなさい。桜庭 皇紀」

「は?」

オレは首だけ振り返った

こいつ、なんでオレの名前を・・?

「生徒会長の桜庭君よね」

あぁ、オレが生徒会役員だから名前が知れているわけだ。だが・・生徒会長は別の奴なんだけど

「何ですか?先生」

「用があるのは、あなたの方じゃない?」
 
相手は、やけにトゲのある言い方だった

「いえ、すみません。間違えました」

オレは目上向けの声と笑顔で答えた。いつもならこれで切り抜けられるのだが、保健医は上着を離そうとしない

「先生、上着が伸びるので離してもらえません?」

「あら、そうね」

彼女は上着を離すと、両手を組んだ

「私はてっきりカワイイ妹さんが心配で、ここに来たのかと思ったんだけど?」

!! オレは保健室のドアを閉め、彼女の正面を向いた

「晶ちゃんのお兄さんの、桜庭 皇紀君」

椅子に腰掛けつつ、彼女はニッコリ笑った

「あんた、誰だ?」

明らかに、オレと晶の事を知っている様な口ぶりだった