「はい、この薬を噛まずに飲むのよ」

年齢は25~27歳くらいかな。髪を後ろに一つに束ねた保健医の先生に
白い錠剤を口にほうりこまれ、ぬるま湯を飲まされた

制服の上着を脱いでベットに横になると、軽い毛布をかけられた

「すぐにお腹の痛みは治まると思うけど、軽い貧血を起こしているから、しばらくここで休みなさい」

「は・・い。あの・・先生」

「なに?」

「どうして、私の名前を知ってるんですか?」

私の姿を見て、『晶ちゃん』と先生は言った

入学してから保健室に来たのは、今日が初めてなのにどうして私の名前を知っているのだろ・・?

「やだ、本当に覚えてない?まぁ、あの頃はメガネもかけてたし2年ぶりだしね」

先生はそう言うと、優しく私のお腹をなでてくれた

2年前・・メガネ・・私の記憶が2年前にさかのぼった

「あっ。和泉先生?」

ポツンと呟くと

「当たり」

と先生は笑った。高原 和泉(たかはら いずみ)先生。私が中学の時の保健の先生だ

「先生いつから?」

懐かしくて勢い良く起き上がったが、すぐに立ちくらみを起こし、ベットに逆戻りとなった

「こらこら、無理しない」

「すみません。びっくりしてつい・・」

中学の頃何回か保健室でお世話になった事がある。あの時も腹痛と貧血でお世話になったっけ

「クス。晶ちゃんは変わらないわね。それより聞くけど、未だに倒れるくらい生理痛がひどいの?」

生理痛?そう言えば今朝から生理になったんだっけ

「いいえ。ここ最近は生理痛なんてなかったのに、なんでだろ。体調でも悪かったのかな?」

首をひねる私に、先生は私の額に手を当てた。そしてちょっとだけ考え込んだ様子だった

「晶ちゃん、最近、アイツに何か言われなかった?」

「え?」

「身近にいるでしょう。小生意気な態度と、妹に意地悪するー」

「クスクスクス。それって、皇兄の事ですか」

皇兄が子供扱いされるなんて、私の中ではおかしかった

「笑い事じゃないのよ。精神的な影響が生理痛に繋がる事もあるの。まぁ、あいつも悪気があってじゃないんだろうけど・・・」

中学校の時も私が保健室のお世話になると、和泉先生から呼ばれた皇兄が荷物を持って迎えに来てくれていた

その煩わしいそうな、つっけんどんな態度から、和泉先生には、皇兄が意地悪に見えたのかな

キーンコーン午後の授業の終わりの鐘がなり、生物の授業が終わったことを示していた