皇兄が、生物の授業の特別講師として教壇に立っている
 
真っ白な白衣をはおり、前のボタンを止めていないのが皇兄らしい

人に教える時の皇兄の口調は穏やかになる

私に勉強を教えてくれる時も、すぐに理解できない私に困った様に笑って、言葉を変えて最後まで教えてくれていた

なのに・・なんで昨夜は・・いったいどうしちゃったの?

昨夜の皇兄は、今まで見た事のない別人だった

私、眠ってる間に皇兄に何かしたの?

『ムカついたから』

皇兄は私にはっきりそう言った。怒らせる様な事、私はしたのだろうか?

蕁麻疹は治まらないし、昨日噛まれた右耳たぶも熱い

「はぁ・・」

言葉にならないため息をついた


「桜庭先生。こっち」

私の実験台についてくれていた女の先輩が手を振って皇兄を呼んだ

「先生はやめろよ。お前らが勝手に決めたんだろ」

カツカツカツと皇兄の足音が近づいてくる

「そうよ。でも選んで正解。私も勉強になりました」

ペコッと女の先輩は皇兄に頭を下げた

そんな中、私は急に息苦しくなってきているのを感じていた

なんだろう・・?頭も少しクラクラする

心なしか、お腹もピリピリ痛い

皇兄が私の隣に立っているから・・?


「萌ちゃん!」

私は隣の実験台にいた萌ちゃんのところへ移動した

「お願い、席替わってくれない?」

萌ちゃんの耳元でお願いする

「いーよ」

即答で答えた萌ちゃんは、私のいた実験台に移って行った

指先が冷たくなっていくのを感じながら、お腹を押さえる

「大丈夫?気分が悪いの?保健室に行きましょう」

私の実験台の女の先輩が、腕を取ってくれた時は倒れる寸前だった

「は・・い」

かろうじて返事をし、生物室を後にした



コンコン

「失礼します」

先輩は、保健室のドアをノックし声をかけた

「どうぞ」

中から女性の声が返ってきた

「先生、この子気分が悪いみたいなの。見てあげて」

「いいわ。そこのベットに寝かせて。あら?晶ちゃんじゃない?」

保健の先生は私の顔を見て、そう呟いた

なんで私の名前を知ってるのだろう・・?

私の知っている人・・?

今は意識がもうろうとして考える事が出来なかった