『教え方が上手』

クラスメイトにも言われたが、前にも誰かに言われた事がある

意識したつもりはないが、晶に勉強を教えていた時に身についた特技?とでも言うのだろうか


白衣を着て、生物室1に入ると、真ん中の実験机に晶は座っていた。そして、顕微鏡の準備が終わり、こっちに顔を向けたと同時にガタンッと音を立てて、椅子から落ちた

駆け寄って抱き起こしたくなったが、オレの代わりに松井が晶を起こしてくれていた

はぁ。心の中でため息をつく

明らかに晶はオレの姿を見て、椅子から落ちたのだ

信じられないといった顔をして・・


 
「はい。1年、教壇に注目。今日は桜庭君に特別講師をしてもらいます」

先生の言葉に、1年生及び、クラスメイトの視線がオレに注がれる

「それでは、今日はオレの分かる範囲で授業を行いたいと思います。まずは、」

 
一通り説明をすると、スギナの胞子を顕微鏡で観察することになった

「桜庭先生。こっち」

晶のテーブルのついている松井が手を招いた

「先生はやめろよ。お前らが勝手に決めたんだろ」

「そうよ。でも選んで正解。私も勉強になりました」

おいおい・・

当の晶は、オレの事を見ようとせず、うつむいたままだった

「あき・」

「萌ちゃん!」

声をかけ様としたと同時に、晶は隣の実験台の友達、二木の所に移動した

晶の首筋に赤い斑点が見える

そして、右手で右耳を押さえていた

昨日、オレが噛んだ耳たぶを・・・

鳥肌は出ていないが、オレのせいで嫌な感覚を思い出したのだ

「晶に代わって来ちゃいました」

二木 萌がそう言ってオレの隣に立った

「そう」

オレは目を伏せる
 
近くにもいたくないって事か・・・

「皇紀先輩、スギナってつくしの事なんですね」

「地面を掘り出したら根が繋がっている為、同植物になる」

二木の質問に答えつつ、晶を見ていた

・・?気のせいだろうか? 晶の表情が青白く見える

晶は時折、お腹を押さえてつらそうに口元に手を当てる

「松井、あっちの台に移った子、気分が悪そうだから保健室に連れて行ってくれないか。ここはオレが見てるから」

「え?ホント?分かったわ」

晶は、松井に肩を抱かれて教室から出て行った