「やっぱり皇紀、カワイイかも。その表情だけでだいたい分かったからいいや。だけど・・」

返事に困っているオレを見て、五十嵐は言った

「女の扱いには慣れている皇紀がねぇ・・」

五十嵐の中での『あいつ』は、『女』だと確定しているようだ

「うるさい」

オレはそれだけ言うと、ソッポを向いた

くそ、晶の前だと調子が狂うんだよ

「五十嵐、オレ午後の授業サボるわ。適当に言っといて」

確か、大した授業でもなかったはず。午前中の授業も聞いてないのに等しいしな

「皇紀、聞いてなかったのか?」

「は?何を?」

「今日、3分の1の先生が研修のため、午後から自習のクラスが多いから、俺達が特別講師で1年の授業をするんだって。さっき、昼に入る前にクジ引いただろ」

クジ・・・そういえばクラスの女子に引くように言われたが、余ったのでいいと言って引かなかったな

「俺は1年2組と外で課外授業とは名ばかりのお散歩。そういえば昨日お前に告白した女の子も2組だったよな。今年の1年って当たりが多いって聞くし、楽しみ♪」

そう言って、五十嵐は目を輝かせた

クジを引いたって事は、別のクラスも見るんだよな

俺たちは屋上を後にして、教室に向かって歩き始めた




教室につくなり

「桜庭君は教え方が上手だから、先生ね」

・・とクラスメイトの女子、松井に白衣と生物1の教科書を手渡された

「授業の内容は、顕微鏡の使い方とスギナの胞子観察だからね。私達先に行って、顕微鏡の準備してるから遅れてきても大丈夫よ」

大丈夫・・て。オレは大丈夫じゃない

「皇紀、白衣似合いそう」

五十嵐がオレから白衣を取って広げた

「返せ。断ってくる」

五十嵐から白衣を奪い取ると、松井を追いかけ様として足を止めた

「なぁ。お前、2組の課外授業なんだよな」

「そうだけど、チェンジはしないよ」

「生物の授業は何組なんだ?」

「確か・・1年4組だったはず」

4組・・晶のクラスだ

ドクン・ドクン静かに鼓動が高鳴りだす

オレは自分の席に腰掛け、生物1の教科書をめくった

確か、顕微鏡の使い方とスギナの胞子観察だったな。授業開始まで後3分弱といったところか。要点だけでも押さえておかないと

「授業やる気?」

「あぁ」

五十嵐の問いに返事をしながらも、目線は教科書を追っている自分がいた