「ほら、その顔、皇紀にビクビクして言い返せないとか言っちゃってるけど、肝心な所では容赦しない所」

 まぁ、五十嵐の言う通りなんだろうなぁ

 基本、超ラブラブの恋愛小説って苦手で・・どっちかと言うと好みは、ストーカーとか殺人鬼とか、人を肉体的にも精神的にも追い詰めるような小説ばかり読んでる人なんで

 その性格が、皇紀と晶を追いつめる描写になっているんだね

 「・・・ま、でも、皇紀のキスの要望は叶えなかったけど、最終的に今回も両想いで終わらせたじゃん」

 「あ・・、それも知ってるんだ」

 皇紀と晶が最後の最後に『兄妹』だという壁にぶち当たり、お互いを諦めようとした時、本当にこのままお別れさせよーかなーって思っちゃって

 その場合、皇紀が宣言通り家を出て、晶とは二度と会えない・会わせない
 でも、お互い大人になって、それでもお互い好きだったら・・・その時は・・とか

 今回すら8ヵ月かかったのに、そこまでの物語を書くことになったら、生きている内に終わるかどうか・・・そう考えると、身震いした

 「だから、それだけはお礼を言っといてくれってさ。17歳の皇紀からの伝言。ちゃんと伝えたからね」

 「いえいえ、どういたしまして」

 皇紀からの伝言を伝える為に、来てくれたのかな?
 なんだかんだ言って、五十嵐は皇紀の事が好きなんだよね

 男同士とか、色々とウワサはされたけど、人として皇紀の事が好きなんだと思う

 『神・僕』の影の立役者は、五十嵐なんだろうなぁ

 素直に言えない天邪鬼なんで、心の中で『ありがとうございました』と呟いた



 「・・・で、さっきの話、考えてくれた?」

 「さっきの話とは?」

 「クソガキをどうにかしてって事」

 まだ、引っ張ってたか・・

 どうにかしろと言われても・・・・本編は終わったワケですし・・どうしろと?

 「桜場とは、学年も違うしさぁ、会わなければいいんじゃないの?」

 意識するからダメなんだよ

 好きと嫌いは紙一重だから

 「俺もそう思ってた。だが、あのクソガキ、『俺の根性を叩き直す』って言って、風紀委員に入ってきたんだ!!」

 くしゃくしゃくしゃと両手で自分の髪の毛をかき混ぜる五十嵐

 「へ・・・あぁー」
 ありゃりゃ、桜場ならやりそう・・・だわ
 
 「だからその髪色にしたんだね・・」

 五十嵐の言う『反・抗・心』って、桜場に向けてのものだったんだ

 「じゃぁ、五十嵐が風委委員を辞めれば?」

 「は?なんで?俺が?逃げるのは絶対に嫌だ!」

  逃げるが勝ちという言葉は、桜場絡みだと適用されないらしい

  でもなんか嬉しかったりして
  本編から19年も経ったけど、キャラ達は独自に動いていたんだなぁって

  この後、五十嵐と色んな事を話したけれど、お互い天邪鬼同士なんで、危険な会話もありつつ終了した