晶の恋人候補に『桜場』にしよう考えた事は、五十嵐には黙っておこう

「だいたい、皇紀も晶ちゃんが会長から呼び捨てにされるはイヤなくせに、クソガキが呼び捨てにするのは認めているじゃん」

うーん
皇紀は多分、晶を『女』として位置づけする男を本能的に区別してるんじゃないかな

それと、晶を成長させてくれる存在を見抜いている。言われたくないだろうけど、それは『兄』としての目線なんだと思う

「俺が晶ちゃんを呼び捨てにしようモノなら、噛み付くような目で睨んでさ、警戒心の塊の黒豹だった」

 身震いしながらも、どこか嬉しそうな五十嵐
 皇紀の反応が楽しくて、ついつい意地悪してるくせに

「そういえば五十嵐、晶と桜場の校則違反を取り消しに行った時、晶の手の甲にキスしようとしてたけど、しなくて良かったね」

「あー、あれね。タイミングよく皇紀から電話が来て、キス出来なかったってヤツ。全然良くないでしょ。今からでも、キスした描写に書き直してくれんの?」

澄まし顔で、目尻にわざと皺をよせるように笑う五十嵐

 「分かってるくせに・・」

 「んー。なになに?」

 「皇紀が公園で晶に『お前のすべてをオレに下さい』って告った時、手の甲にキスしたこと。皇紀より先に五十嵐が手の甲にキスしたって知ったら、黒豹にかみ殺されてるよ」

 「あのシーンか・・皇紀もよくもまぁ・・死火山が噴火しそうなセリフを言ってたよね、熱い熱い。あ、あの場面で思い出したけど、今回、手の甲にするキスシーンを書き直そうか迷ったって聞いたけどホント?」

 ドキッ・・
 どこからその情報を掴んだんだ・・五十嵐よ

 実はそうなんだ・・

 19年前の皇紀に、『晶とまともに向き合ってキスをしていない』と、言われたのが残っていて、手の甲のキスシーンは2回あったから、2回目のシーンを皇紀から晶へ優しく口づけするのに変更しようと思った

 途中までは書いてみたんだけど・・・

 返答に困っている私に「僕と作者って似てるよね」と五十嵐が呟いた

 「それって、どういう・・」

 「最終的に書き直しをしなかったって事は、皇紀の事は好きだけど、天邪鬼な部分が上回ったってことでしょ」
 
  五十嵐の指摘に、無意識に目尻が細くなり、頬骨があがる

  ザクザクと痛いところをついてくるな・・と