「ただ・・な」

 やっぱり続きがありますか。そうでしょうね。そうでしょうとも。甘んじて聞きますよ

 作者、ゴクンと唾を飲んだ

 「人を散々泣かしたり、苦しめたりしておきながら、晶と『両想い』になったら『はい。終わり』っていうのは、納得いかないだろ」

 「へ・・・?」

 皇紀は人差し指で私の顔をテーブルの中心まで来るように合図し、自分もテーブルの中心まで顔を近づけた。顔と顔の間、約10cm

 「オレ、両想いになってから、晶とまともに向き合ってキスもしてないんだぜ」

 「は?でも、あんた達、2回キスしているでしょ」

 「あんなの、キスの内に入るのかよ。あの時は、2人とも両思いだと思っていないわけだし」

 確かに・・・晶との初キスは、皇紀が寝ぼけてした事だし、2回目にしたって、晶が一方的にしたものだ

 まさか・・皇紀の不満・・て

 「あんたもしかして、晶とラブラブな所を私が書かずに終わるから不満だと?」

 「あぁ、そうだよ。人を散々酷い目に合わせておいて、それはないだろ」

 は・・・なるほど。あなたの不満は確かに分かります

 「けどね皇紀、この物語は書き始める時点から、あなたと晶が両想いになる時点で終わろうと思っていたの。ある意味、作者的にそれが目的だったというか・・・」

 熱しやすく、冷めやすい作者としては、ここまでやり遂げようという目印がほしかった

 「だから、その目標に到達出来て、満足しているんだ。それに・・基本的にラブラブな表現は苦手なの」

 あんたたちのキスシーンだけでも、どんなに苦労したか。それ以上の事を書けと言われたら、1日中悩んでないと駄目じゃないの

 「苦手って・・それだけの理由で・・」

 「ま、そんな所です。至らない作者でごめんね」

 「・・・」

 ホントはね・・書こうかなって思った時もあったんだけどね・・作者は小悪魔なので、幸せから一気に奈落に落とすのが好きだから・・・また泣かせちゃいそうな気がするんだ。だからごめんね皇紀

 心の中で、謝りつつ・・・

 「・・で?」

 「え?」

 「もう一つあるんだろ用件が。早く言えよ」

 皇紀は、長い脚を組みなおし、淡々と言った