もう皇兄、私の傍にいるって言ったのに、1人で登校するなんて・・

「皇兄のうそつき!」
玄関を飛び出し、家の門の前で地団駄をふんだ

「だーれが、嘘つきだって?え?」
門の横から声がして、見ると塀に寄り掛かった皇兄が立っていた

「こっ・・皇兄!」

「言ってみろよ。晶」

皇兄はパタンと読んでいた本を閉じると、目線を合わせられない私の頭を本でポンと叩いた

「い・いや・・その・・『う・・そら(空)につき(月)が・・』を縮小してみたの・・」

絶対・・信じてもらえないだろうけれど
なんと、苦しい言い訳なの。まさか、皇兄がいるとは・・

「そっか。じゃぁ、行くぞ」

あれれ?てっきり追及されるかと思ったのに、皇兄はあっさりと引いてしまった

皇兄の横に並んで一緒に歩き出し、ふと気付いた事があった

「ん?うーむ・・」

「どうした?晶」

立ち止まった私に皇兄から声をかけられる

「えーとね。皇兄と一緒に登校するの、初めてじゃないのに、何か違った感じがするの」

両想いになったからとかではなくて・・
なんか・・こう・・別の・・

頭をひねりながらまた、歩き出す。そして、また立ち止まる

その度に皇兄も歩き出し、立ち止まってくれていた

「あっ!わかった。皇兄が横にいるんだ」
私はパチンと手を叩いた

「さっきから横にいるだろ?」

「うううん。今迄一緒に登校した時は皇兄、いつも先に行っちゃってさ。私、追いつくのに大変だったんだもん。でも今日は違うね」

今日は私の歩幅に合わせてくれて、隣にいてくれる
だから違った感じがしたんだ

「何言ってんだか」
皇兄は少し顔を赤らめて、歩き出した

きっと皇兄も気づいていたんだね

『一緒の時間をあるいている』という事に・・・

「晶・・こら、行くぞ」

「はーい」
 皇兄の声に元気よく返事をして、皇兄の左手に自分の右手を絡ませる

「晶!!」

「ふふっ。自分の幸せを掴んじゃった」

ちょっと驚いた皇兄に、私は笑顔で返した

 
これから・・苦しいこと、辛いこと、きっとあると思う。けど、私はこの手を離さない

だって、私の幸せはここにあるもの

だから・・皇兄・・一緒に幸せになろうね



 Act.337 ラスト 桜庭 晶