真っ直ぐな晶の瞳。思えばこの瞳から、オレの心は囚われたのだ

「私は・・私の幸せは・・皇兄が隣にいてくれること・・でも・・」

晶の口に人差し指をあてる

「待て、『でも』はもう無しだ。言い出したら限がない。オレの幸せはお前が傍にいて、お前の幸せは、オレが隣にいる事。だったら、答えはひとつ。2人が一緒にいれば幸せになれる。そうだろ晶」

「・・はい。はい皇兄。うっ・・うっ・・」

泣きじゃくる晶を抱きしめる

オレの目からも涙が溢れ出て、オレ達はしばらくの間抱き合ったまま動かなかった

公園の照明がスポットライトの様に、オレ達の姿を照らしていた



「晶」

「なぁに?皇兄」

お互いの気持ちが落ち着いたところでベンチに腰掛けなおすと、オレ達は向き合った

「左腕・・出して」

「?」
晶は首をかしげながらも、オレの前に左腕を出した

オレはポケットから腕時計を取り出して、晶の左腕にくぐらせた

「皇兄・・これ・・あっでも、文字盤が薄紫色になってる。これ、皇兄のだよ」

クス・・やっぱり晶はオレが腕時計を交換した事に気付いてなかったか

「こっちが本当のお前の時計。ちゃんと覚えておけよ」
 
「え!?でも、なんで??どーして?」

うるさいな
話せば長くなるし、話すつもりもない

パチンと音を立てて、時計の金具をはめる

「晶・・オレ達は今から、幸せと背中合わせに辛いことも多くなるかもしれない」

幸せの光には、影の部分も存在する事を晶にはちゃんと伝えたかった

「皇兄・・・」

「怖いか?」

「うううん。皇兄が傍にいてくれるんでしょう。だから大丈夫」

「オレは、可能な限りお前の傍にいる。いるつもりだが・・もしも離れている時は、この時計を見て思い出せ。オレ達は同じ時を刻み、一緒の時間を歩いている。オレの心は、常にお前に向いていることを・・」

「こぅ・・にぃ・・」

晶は、また泣き始めた

「泣くな。お前が泣くと、オレの幸せが減るんだよ。だから泣くな」

ハンカチは晶の素足を拭くのに使った為、自分のシャツの袖で晶の涙を拭う

「だっ・・だって・・うれしいんだもん・・・うれし泣きでもだめなの?」

「だめだ」

「じゃぁ、泣くのは・・これで最後にする」

そう言って、晶は泣きなが笑っていた