「それでも、皇兄にはもっとふさわしい人がいるもん」

 皇兄はいつも、成績は学年トップ、運動も体育祭にはどの競技も1位を独占、そんな皇兄には、いつも綺麗な人が取り囲んでた

 私の成績は・・言いたくないけど、中の下。運動神経もなくて、体育祭には、仮病を使って休みたいくらい酷い成績

 『なんで、あなたが一緒にいるの?品位が落ちるでしょ』って、皇兄は知らないけど、何回か言われた事もある

 私が皇兄と一緒にいるだけで、周りはみんな比べちゃう

 「!」
 皇兄の大きな手が、私の頭を優しく撫でて、「例えば?」と聞いてきた

 例えば・・それはすべて、私と正反対の人だよ

 「綺麗で、頭の良い人、運動神経も抜群で、皇兄の横に立っても見劣りしない人」

 傍にいるだけで、皇兄の良さを引き出せる人だよ

 少なくとも、私以外の人

 「顔・・見せて」
 皇兄の囁きと共に、私の髪が痛くない程度に引っ張られ、私は瞬きしながら顔をあげた


 「だから・・何のとりえもない私なんて、皇兄には絶対ふさわしくないの」

 何か・・1つでも自分に自信がもてるものが何もないの

 「何のとりえもないなんて、自分で言うな」

 少し怒った顔で皇兄は言うと、すぐに穏やかな顔で私に次の言葉を吐いた

 「お前には、お前の良さがあってそれに気付いていないだけ。オレの方が、お前にふさわしくないのかもしれない」

 何を言い出すの皇兄!?
 皇兄が私にふさわしくない!?

 どこをどう取ったらそういう事になるの?

 「それは違うよ!!皇兄は・・皇兄は・・ホントにステキな男(ひと)で・・だから、私・・」

 あなたを好きになってしまったの・・そう言いそうになって言葉がとまり、私は顔を覆った

 そんな私の耳元で、皇兄が優しく囁いた

 「晶、オレは、お前をひとりの『女の子』として好きだ。だから、お前の気持ちをちゃんと聞かせて」

 私の気持ち・・答えてもいいの?

 本当に、答えてもいいの?

 これだけ、私は皇兄にふさわしくないんだよ。それでも、私の事『好き』って言ってくれるの?

 ドクン・・ドクン・・・

 私・・私の恋は・・実るの・・?

 「好・・き。私も・・」
 私は、皇兄の顔を見ると、途切れ途切れで言った

 「私も・・皇兄と同じ・・『好き』です」