ある日、私の周りを数人の男の子が取り囲んだ

『お前、あきらって名前なんだろ』

何も答えないでいると、ドンッっと背中を押された

『痛っ・・』

私の両手、両膝が地面についた

『答えろよ。あきらって言うのか?』

『う、うん』

怖くて、うんとしか返事が出来なかった

『じゃぁお前、男なんだろっ。俺のクラスの友達もあきらって言うんだぜ』

『俺の親戚のにーちゃんもあきらって言う』

『お前、女なのにあきらって名前おかしい!!』

その後は、『おかしい』と何回も言われ、私は耳を塞いだ

おかしくない。おかしくなんかないもん

そう叫びたかった

でも怖くて、次第にそれは涙に変わっていった

私が泣き出すと、男の子達はバツが悪くなったのか去っていった

だけど涙は止らなくて、止ることを知らなくて、うずくまって泣いた

『泣いてるの?』

私の頭の上で声がした

さっきの男の子の誰かが引き返してきたのかと思い、返事が出来ない

『・・・』

うずくまる私の背中合わせに、その子が座った

『じゃぁ今日授業で習った曲、特別に弾いてやるよ』

そう言って、その子は途切れ途切れながらも、一生懸命優しいメロディを奏でてくれた

その時は、曲名は分からなかったけど、後で『星に願いを』だと言う事を知ることになる

私の涙は次第に晴れていた

『もう一回聞きたい』

曲が終わった後、私は言った

その子はスクッっと立ち上がり

『だめ、特別だって言ったろ』

と言って、駆けていった

『待って!』

駆けていく後ろ姿を見送る

印象深い、茶色の髪の後姿・・あれは・・



「待って!響せんぱ」

ゴンッ

鈍い音が頭の中に流れ、痛みと共に私を襲った

「い・痛い!!」

おでこを両手で押さえ起き上がる

オレンジ色の電気が半目の私の中に差し込んできた

痛いし、まぶしいし、どうなってるの?

まだ、上手く視力が定まらない為、手探りで辺りを探る

すると、誰かの腕を掴んだ

「だ、誰?」

「オレ」

この声は、皇兄

ようやくおでこの痛みも落ちついて、辺りの状況が分かってきた

皇兄はベットの端に腰掛、私の起き上がった正面で鼻の頭を抑えていた