晶は自分に何かを抱え込むと、誤魔化すために作り笑いをし、本心を伝えたい時は、相手の目を見て、真っ直ぐに話す

 オレが今まで見てきた晶は、そうだった

 でも、この晶は違っている
 オレの顔を真っ直ぐに一度も見ていない

 晶は、本心を言っていない

 オレの気持ちに、いい返事でも、悪い返事でも、オレはお前の本心を聞きたい

 お前の・・答えをちゃんと聞きたい

 「それが、お前の答えかよ。晶!!」

 本当に・・本当に『妹』に戻る事がお前の答え?

 オレは、晶の前に立ち塞がった

 晶は、オレの顔を見ようとしない

 「こっち向けよ晶。オレの方を向けって」

 オレは、晶の肩を掴む
 ちゃんと、オレの目を見て、答えてくれ

 「好きだ」

 「・・!」

 「お前が好きだ。晶」
 オレの気持ちに・・YESでもNOでもいいから、目を見て答えてくれ

 「ちがっ・・」
 晶は、オレの声に耳を塞いだ

 「ちゃんと聞いてくれ。オレはお前を・・」
 耳を塞ぐ晶の手を、払いのける

 晶は、うつむきながら首を振った

 「違う・・皇兄の『好き』は、私の『好き』とは違う」

 晶・・・
 それは、答えではない
 
 お前は、いったいオレの『好き』をどう思っている?
 オレも、お前の『好き』という意味を聞いてみたい

 オレは、手に持っていた制服の上着を、晶の背中に羽織りかけた

 「こぅ・・お兄ちゃん」

 「ちょっといいか」
 声をかけるや、否や、オレは晶を抱きかかえると、公園のベンチに座らせ、ハンカチを片手に水場へと向かった

 「晶、足出して」

 膝を抱える晶の足元にしゃがみ込み、晶の足首を掴むと、濡らしたハンカチで晶の足を拭う

 晶の足は、公園の砂だらけで、草で切った傷も見られた

 まったく・・無茶して

 「なんで、裸足で逃げ出すんだ?せめて、靴下くらい履く時間はなかったか?」

 「だって・・お祭りに行ったときも、靴下履いてなかったから・・」

 晶は照れくさそうに、呟いて頭をかいた

 あぁ・・やっと、本当のあきらに会えた

 オレは晶を見つけ出して、自分の気持を伝えようとばかり考えて、晶の素顔を見ていなかった

 こいつ・・オレに会ってから、ずっと強張った表情しか見せてなかったな