晶が目を覚ました
 
 うれしい
 やっと、あいつと見つめ合える

 あいつに、最初に会ったら、何と声をかけよう

 晶・・晶・・何度呼んでも足りない

 オレは脇目もふらず、五十嵐の家に走っていた

 五十嵐の家は、学校から15分もかからないのに、遠く感じる

 五十嵐の家の裏門をくぐり、裏口から家の中に入る
 これは、五十嵐が深夜にも出かけれるようにと、気を使ってくれたものだ

 5日間もこの家に出入りして入るおかげで、一直線に晶の部屋へと行ける

 「はぁ、はぁ、はぁ」
 オレはもう、晶の部屋のドアの前にいた

 あいつに会ったら、すぐに抱きしめてしまいそうだ
 
 だが、病み上がりのあいつを急に抱きしめて、骨とか折れたりしたらまずいよな
 今のオレには、手加減という文字は無い様だから

 落ち着け、騒ぐ心を落ち着かせ、ドアノブに手をかけゆっくり回した

 「あき・・ら」
 叫びそうになるのをグッと堪え、極めて落ち着いたように声をかけた

 返事がない
 聞こえなかったのか?流石に声と絞りすぎたか?

 「晶?」
 ベットへと近付くにつれ、晶の姿が見えないことに気付く

 「何処・・行ったんだ?」
 目が覚めたから、診察にでも行ったのだろうか?

 ブルッと胸ポケットの携帯が震えた

 着信は五十嵐
 
 「もしもし、五十嵐?部屋に着いたんだが、晶は?」

 「皇紀!皇紀・・ごめん」

 「え?」

 「ごめん・・晶ちゃんが・・」

 五十嵐の声が、携帯からの声と、部屋の廊下から近付いてくるのが分かった
 
 「晶が、どうかしたのか?五十嵐」

 カチャリとドアが開けられ、五十嵐が携帯の電源を切った

 「皇紀・・ごめん。晶ちゃんがいなくなった」

 「な・・何だと・・」

 「本当にごめん。晶ちゃん、シャワーを浴びたいって言って、バスルームに1人にした隙に。俺、彼女が目を覚ました事がうれしくて、様子がおかしい事気付かなかった。今、家の者全員で探してるから」

 五十嵐は、オレに深々と頭を下げた

 「そうか・・晶が・・。頭を上げろよ五十嵐、お前が責任を感じることはない。お前には感謝してる。本当に感謝してるんだ」

 「皇紀・・」

 「晶は、オレが見つけるよ」
 
 チェストの上の晶の腕時計を掴むとオレは部屋を後にした