公園で、女の子がひとり泣いている

 うずくまって肩を震わせながら泣いている

 私は、その子を知っている・・知っていて当たり前、だってその子は昔の私だもの

 私は公園を見回した。変わらないなぁ・・と思う

 昔、髪の色の事や、男みたいな名前だって、皆にいじめられたっけ
 
 その度に、公園で泣いてた

 「もう、泣かないで」
 幼い私に、声をかけようとした時、ひとりの男の子が現れた

 顔は逆光で隠れているけど、私と同じくらいの見事なブラウンの髪の色がとても印象的

 「泣いてるの?」
 その男の子は、幼い私に尋ねた

 幼い私は何も答えない

 「じゃぁ今日授業で習った曲、特別に弾いてやるよ」

 男の子は、縦笛を取り出し、幼い私の横に座ると、途切れ途切れながらも、一生懸命優しいメロディを奏でてくれた

 この曲・・『星に願いを』だ
 そう、私が好きな曲
 この時に、聞かされて、好きになった曲

 「もう1回聞きたい」
 幼い私は、涙が晴れて笑顔になっていた

 「だめ、特別だって言ったろ」
 男の子はスクッと立ち上がり、駆け足で、私の横を走り去っていった

 「待って!」

 あの時、幼い私は彼に追いつけなかったけれど、今の私は違う
 彼より、歩幅も大きいから、追いかけて男の子の腕を掴んだ

 「あの・・曲弾いてくれてありがとう。よかったら名前教えてくれないかな?」

 「俺・・俺は・・」
 男の子は名前を口にした。けれど、突風でうまく聞き取れなかった

 「もう1回言って?」

 「だめ、お前も、そろそろ目を覚ました方がいいよ」

 「え?」
 そう、捨て台詞を残し、男の子は走って行った

 印象深い、茶色の髪の後ろ姿

 思えばあれが私の初恋

 前にも同じ夢を見た・・

 彼を追いかけようとして、勢いよく起き上がると、ゴンッとおでこになにか物体があたったっけ・・

 その痛みで・・私は目を覚ました


 そう・・私は目を覚ます

 瞼はとても重く、まるで接着剤を目の周りに付けられているかの様だった

 ゆっくり、時間をかけて、目を開ける・・

 けれど、入ってくる光が眩しいと言うより、痛くて、涙が溢れてきた

 涙と、目の周りの霞が視界を邪魔して、うまく目線を定めれなかった

 ただ・・見たことのない天井だと思った