いい女ランキングなどに、入れようと思う相手などいないのに
 「なー。こーちゃん」
 と言われても、オレは首を傾げるしかなかった

 「オニイチャンの選ぶ相手って、『もも』なんじゃぁ・・」

 双葉の鋭い勘に、会長は胸を張って、『そーや』と答えた

 『もも』とは、晶の通り名だった

 「こーちゃんもそう思うやろ。『もも』が一番かわええよな」

 会長の問いに、思わず頷きそうになった
 オレの中では、常に晶が1番なのだが・・
 ここで会長に同意したら、傍目からは兄バカになるんだろうな

 「まさか・・皇紀先輩も、『もも』を・・?」

 「いや・・オレは・・その」
 オレは、言葉を濁しながら、頭をかいた

 「そーやな。こーちゃん」
 会長にニコニコ顔につられてオレも笑顔になり、首を縦に振った

 「はぁ、呆れた『もも』バカっぷり。まぁいいわ。『もも』も候補に入れておくから。あっ私、友達と約束あるの。じゃぁね」

 双葉は、鞄に手帳を詰め込むと、ダッシュで去って行った

 「はぁ・・」
 晶がカワイイと認めているとは言え・・自分のとった行動に、自分自身赤くなった
 
 「なんか俺、初めてほんまもんのこーちゃんを見たような気がする。こーちゃんもそんな顔するんやな」

 オレの姿に、会長がぽつんとつぶやいた

 「そんな顔って、どんな顔ですか?」

 「鏡見たら、わかるわ。でれ~とした顔や」

 でれ~とした顔なんかしてない。いや・・しているのか?
 晶の事を考えると、心が満たされて、優しい気持ちになれる

 「それより、なんやその資料」

 「あぁ、今から生徒会の予算の件を職員会議で発表する事になっていて」

 「そーか。今日がその日か。勝てそうか?」

 「勝ちますよ。もちろん」

 何の為に、ここまでがんばってきたのか
 オレの為に、おにぎりを作ってくれた晶の為にも
 
 「じゃぁ、時間なので俺、行きます」

 書類を抱え、生徒会室を出ようとした時、会長がオレの手から書類をスルリと奪った

 「!?」

 「俺が行くわ」

 「えっじゃぁ、一緒に」

 「なんや、俺1人やと不安か?」

 「いえ・・そんな事は」

 「顔が不安て書いてあるわ。まぁ、今までの行動やったらそう、思わん方がおかしいしな」
 会長は、そう言って目を細めた