「そうか・・それがあの子の真実だったんだな」

 オレはソファに座らされ、テーブルに煎れ立てのコーヒーとトーストが置かれた

 落としたトレーは片付けられて行った

 五十嵐は、オレの話にも動じず、コーヒーを口元に運んだ

 「俺は、彼女には何も言ってないよ。こうなる前に、お前に内緒で何回か会ったけどな」
 
 「でもお前、真実って・・」

 「あぁ、あの時は、彼女が名前を伏せて、お前の為におにぎりを作っていたから、『早く、真実を言い合う事ができたらいいな』とは言ったけど、こんな真実が隠れているとは思わなかった。俺はてっきり、お前が彼女に自分の気持ちを伝えるものだと思ってた」

 真実・・?
 晶の本当の気持ち?

 『好き・・』 晶のあの時のかすれた声が、頭の中に響いた

 晶が、オレの事を好き? 兄としてでなく・・男として

 「まさか、晶がオレの事を?だって、そんな・・素振りあいつ・・」

 口元に手を当て、考える
 そんな素振り・・


 『私、皇兄が好きです』 

家の庭先で晶がオレに向かって言った言葉


 「思い出したみだいだな。皇紀がオレの家に転がり込む前日に、告白されたんだろ。『好きです』って」
 
 カタカタとオレの両手が震えた。だってあれは・・そんなはずない

 「だって、そんなはずないだろ。あいつ、オレを拒否する蕁麻疹を出しながら言ったんだ」

 晶の白い肌に、浮かぶ赤い斑点 

 「皇紀・・俺、思うんだけど、晶ちゃんがお前以外の所で、蕁麻疹を出している所見たことある?会長や桜場の前で出した事あるか?」

 「だからそれは、オレの事が嫌だから、オレを拒否してー」

 「反対だろ。彼女はお前だから、蕁麻疹を出したんだ。たぶん・・本人も気付かない内にな。蕁麻疹の原因って怒りや、興奮した時の感情で現れるんだったよな。だったら、普通の人が好きな人を前にして顔が赤くなる様に、彼女の場合、蕁麻疹が身体の表現だったんだよ」

 それが・・本当なら、オレは晶になんて酷い事を・・

 「オレは・・あいつが必死で蕁麻疹を抑えようとしていたのに、なのにオレはあいつに・・『大嫌いだと・・顔も見たくないと』」

 「・・仕方ないさ。お前は、彼女の事が好きすぎて、見えてなかったのだから」

 両手で顔を覆うオレに、五十嵐はそっと手を置いた