『雨が止んだら・・帰る』 そう、晶と約束していた

 雨はいつの間にか、止んでいた

 本当はもっと早く知っていたのに、気付かない振りをしていたのかもしれない

 晶と、ずっと一緒にいたくて・・
 でも、晶の身体の考えるのであれば、早く言うべきだった
 
 オレは、どこまで自分勝手なのだろう

 「さて、そろそろ帰る準備をするか」
 自分の声のトーンを少し明るくして、何もなかった様に言ってみた

 晶はオレの言葉に身体を起し、白衣で胸を隠しながら、オレの方を見上げた

 大きな瞳に溢れんばかりの雫がたまっていた

 「まだ、泣いているのか?」

 ホントに困った奴だ
 晶の目元に手を伸ばし、親指で涙を拭い去る

 まったく、大人っぽい表情になって・・

 『人を好きになるのって、こんなに辛いんだね』

 いつのまにか、こんな事を考えるようになったんだな

 でも、お前には涙は似合わないな

 晶の左頬をつまみ、横に引き伸ばした

 「ふにぃ」
 猫がシャックリしたような声で晶は鳴いた

 「ふふっ。泣いてるより、こっちの方が似合うな」
 
 大人の階段を、2段飛ばしで上るなよ

 「お前は、笑ってるほうがいい。ほら、笑えよ」

 オレの言葉に晶は大きく瞬きし、首を傾けた
 そして、口元を軽く結び、笑顔になろうとしていた

 もう少し・・で最後に、晶の笑顔を見てお別れだ
 
 「・・ん出来るって思ったのに・・」
 晶は笑顔にならずに、かわりに息を吐いた

 「あき・・ら?」
 どうしたと言うのだろう?

 「ケホッ。皇兄・・ケホッ。皇兄・・もう少し私の話を聞いてくれる?」
 
 「でも、お前咳が・・声もかれて来ている。話なら家でも出来るだろ」

 その頃はもう、兄と妹で

 「今・・したいの。聞いて」
 オレの言葉も聞かず、晶は話し出した

 「白馬の王子様もそうなんだけど、私にはもうひとつ夢を見ていた事があったの。自分の初キスは、絶対好きな人としたいって」

 晶は・・何を言いたいんだ?
 折角、いい思い出で別れ様と考えているのに、お前の初キスの話なんてオレは・・聞きたくない

 「皇兄の初キスは、好きな人とだった?」

 「オレは・・」
 あの頃は、好きになったのが妹だと認めたくなくて、自暴自棄になっていたから・・な