「晶・・?眠ってるか?」

 皇兄が私に優しく尋ねてきた

 「起きてるよ」
 眠るなんて、もったいなよ

 「雨が止むまで、何か話そうか?」

 皇兄とお話・・もう、1年以上お話をしていなかった様な気がする

 「・・いいよ。でも、何をお話する?」

 話したいことは、いっぱいあるはずなのに、いざとなると出てこない

 「そうだな・・」
 
 皇兄も同じ事を考えていたのか、そこから黙ったままになった

 皇兄・・と共通の話題かぁ。家、学校の事?どっちも話題にはしたくないと思った

 私の髪を皇兄は優しく撫で始めた
 
 皇兄の手櫛って、気持ちいいなぁ。髪を触れられるのって大好き
 心地よくなって、眠くなってくるよ

 「フフフフッ」
 私がウトウトしそうになっていた時、皇兄の笑い声が耳に入ってきた

 とても楽しそうな笑い声・・?
 突然、どうしたんだろう

 「なに?皇兄ひとりで、楽しそう」
 私は肩から顔をあげた

 「ちょっとな。昔を思い出して」

 「昔って?いつのこと?」

 聞きたい。聞きたい。興味津々でつい、皇兄から身体を離し、向き合おうとした所、皇兄に体勢を元に戻された

 もう。

 「ねぇ、教えて。何を思い出したの?」

 皇兄は今だ笑っていた。相当おかしいことを思い出したんだろうと思う
 自分ばっかり楽しくて、私はつまらないよ。プクッと唇を尖らすと

 「悪い、悪い」
 とようやく、落ち着きを取り戻した皇兄が話始めた

 「お前、覚えてる?小学3年の時にやった学芸会の時の事」

 「がく・・芸会・・?」

 「題目が『眠りの森の美女』で、オーロラ姫役やっただろ」

 オーロラ・・?姫?
 そんなのやったっけ?

 「え・・えーと・・」
 
 「忘れているならいい」

 やだ、皇兄が話題をかえてしまいそう。えっと、姫、お姫様役ね

 「あっと、思い出した!うん。やったよ。何とか姫・・それがどうしたの?」

 急いで思い出したように言ってみたけど、私の嘘バレちゃうかな?

 「100年の眠りについたオーロラ姫が、王子の口付けによって目覚める劇の山場のシーンでお前・・」

 眠りについた・・姫?

 『晶ちゃんは、セリフ覚えが悪いから、眠ってるだけのお姫様役ね』

 姫役の選出の理由がそれだった事を思い出した