皇兄の身体がとても温かい

 私の胸から、皇兄の体温が伝わって、なんて心地いいんだろう

 皇兄に温めてほしくて、白衣を脱いだ私を皇兄は抱きしめてくれた

 好きな人に抱きしめられる事が、こんなに幸せだと思わなかった

 「晶・・苦しくないか?」

 苦しいわけがない。私が望んだ事だもの

 「丁度いいよ」

 「寒くないか?」

 寒い・・?そんな言葉なんて頭から抜けてたよ

 「あったかくて、すごく幸せ。皇兄は寒くない?」

 本当に幸せで、溶けそうなくらいなのに。でも、私だけが幸せで、皇兄はどう思っているかわからない

 「大丈夫。お前は自分の心配だけしてろ」

 皇兄の『大丈夫』という言葉の響が好き。とても安心する

 私が安心している中、皇兄は手を伸ばし、私の足元の白衣を掴んでいた

 いやだ。もう、皇兄と離れるなんて!

 「や・・もう少し、こうしていたい」

 お願い。私を引き離さないで

 もう少し、このままで・・

 私は皇兄の背中に回していた腕に、力を入れた

 「お前の背中に羽織るだけだ。前と後ろと一緒には温められないだろ」

 皇兄は、私をなだめるように語りかけ、私の背中に白衣が舞い降りた

 「雨が止むまでだ。止んだら・・帰るぞ」

 「はい」

 雨・・
 雨は好きではなかったけれど・・私と皇兄をこうして会わせてくれた

 今は、とても雨が好きになりそう・・お願い、雨さん どうか止まないで


 私の願いが通じたのか、雨は止むことがなかった

 あぁ、なんて気持ち良いんだろう
 
 私は皇兄の肩に左頬をつけ、目を閉じていた

 「う・・ん。ケホッ」
 ・・と時々、乾いた咳が私を邪魔したが

 「・・・・んっ」
 つばを飲み込むと、喉の奥が痛くなってきていた

 ぎゅぅっ!
 突然、私を抱きしめている皇兄の腕の力が強まり、びっくりして背中を仰け反った

 「悪い、晶。大丈夫か?やっぱり、無理があるな。やめるか?」
 すぐに皇兄が謝ってきて、今、一番聞きたくない言葉を口にした

 「大丈夫だもん。私はこうしていたい」
 
 絶対嫌!私は大きく首を横に振った

 骨が折れたって構わないよ。好きな人と抱き合っていられるなら

 ただし、短い期限つきだけれど